犬や猫が、おもちゃやビニール、布、ひもなどを誤って飲み込んでしまう「異物誤飲」。
特に犬では、食べ物以外のものを口にして、そのまま飲み込んでしまうことがあります。また、猫ではひもや糸などで遊んでいるうちに飲み込んでしまうことがあります。
「今は元気だから大丈夫かな?」
「便と一緒に出てくるまで待ってもいい?」
そう思われるかもしれません。
しかし、異物の種類や大きさによっては胃や腸で詰まり、腸閉塞を起こしたり、消化管を傷つけたりする可能性があります。
そして、誤飲に気づいてからの時間によって、できる処置が変わることもあります。
今回は、犬や猫が異物を誤飲した際に動物病院で行うことがある**「催吐処置(さいとしょち)」**についてお話しします。
▶︎ 異物を飲み込んだら、まず動物病院へ連絡を
犬や猫が何かを飲み込んだことに気づいたら、まず動物病院へご連絡ください。
その際には、
- 何を飲み込んだのか
- どのくらいの大きさ・量なのか
- いつ飲み込んだのか
- 現在の犬や猫の様子
を、できる範囲でお伝えください。
もし同じものが手元に残っていれば、実物をご持参いただくか写真を撮影してお持ちいただくと、大きさや形状を正確に判断する手がかりになります。
薬剤や家庭用品などの場合には、商品名や成分がわかるパッケージも大切な情報になります。
▶︎ 「催吐処置」とは?
催吐処置とは、薬剤を使用して意図的に嘔吐を起こし、胃の中にある異物や有害な物質を吐き出させる処置です。
誤飲したものがまだ胃の中にあり、安全に吐かせることができると判断した場合には、催吐処置を検討することがあります。
異物をうまく吐き出すことができれば、内視鏡や外科手術など、より大きな処置を回避できる可能性があります。
ただし、異物を飲み込んだら必ず吐かせればよい、というわけではありません。
異物の種類や形、大きさ、誤飲してからの時間、犬や猫の状態などを確認して、催吐処置を行ってよいかを判断します。
▶︎ 早めにご連絡いただくことが大切です
誤飲した異物が胃の中にある場合には、催吐処置によって取り出せる可能性があります。
しかし、時間が経過すると、異物が胃から小腸へ移動することがあります。
小腸まで移動してしまうと、催吐処置で取り出すことはできません。
そのまま便と一緒に排出されることもありますが、大きさや形状によっては腸管内で詰まり、腸閉塞を起こすことがあります。その場合には外科手術が必要になることもあります。
そのため、
「飲み込んだけれど、今は元気だから少し様子を見よう」
と判断する前に、まず動物病院へご相談ください。
早めに対応することで、選択できる処置の幅が広がる可能性があります。
特に「確実に異物を飲み込んだ」「危険な物を飲み込んだ可能性がある」といった場合には、診療時間外だからと翌日まで待たず、夜間救急動物病院への相談・受診もご検討ください。
▶︎ すべての異物を吐かせられるわけではありません
催吐処置は便利な方法ですが、どのような誤飲にも行えるわけではありません。
たとえば、吐き戻す際に食道を傷つける可能性があるものや、誤嚥の危険性が高いもの、腐食性のある物質などでは、催吐処置が適さない場合があります。
また、すでに意識状態に異常がある場合なども、催吐が危険になることがあります。
そのため、ご家庭で自己判断で吐かせることはおすすめできません。
特に「塩」を飲ませて無理に吐かせる方法は、重篤な塩中毒を引き起こし生命に関わる危険があります。絶対に避けてください。
異物を飲み込んだ場合には、ご家庭で吐かせようとせず、まず動物病院へご相談ください。
▶︎ 当院での催吐処置について
当院では、診察を行い、飲み込んだものや動物の状態を確認したうえで、催吐処置が可能かどうかを判断します。
必要に応じて、レントゲン検査や超音波検査などを行い、異物の位置や消化管の状態を確認することもあります。
催吐処置を行う場合、当院では主に、
-
犬:ロピニロール(犬用の点眼催吐薬)
-
猫:デクスメデトミジン(注射薬)
犬と猫では薬に対する反応が異なるため、使用するお薬の種類や投与方法も異なります。 なお、猫で使用するデクスメデトミジンは本来「鎮静薬」であり、その副作用(嘔吐作用)を利用して催吐を行います。そのため、処置後に眠気やふらつきが見られることがあります。当院では必要に応じて拮抗薬(薬効果を打ち消す薬)を使用し、十分に意識が戻るまで院内で経過を観察します。
▶︎ 吐いたからといって、すべて出たとは限りません
ここは催吐処置を考えるうえで、とても大切なポイントです。
催吐処置によって嘔吐することができても、胃の中にあるものがすべて排出されるとは限りません。
目的の異物が吐物の中から確認できれば、取り出せたことを確認できます。
しかし、
「異物が見つからない」
「複数飲み込んだ可能性がある」
「すべて出たかどうかわからない」
といった場合には、胃や腸の中に異物が残っている可能性を考える必要があります。
必要に応じてレントゲン検査や超音波検査などを行い、その後の対応を検討します。
▶︎ 催吐処置で異物が出なかったら?
催吐処置を行っても異物が確認できない場合には、そのまま「出なかったから様子を見る」とは限りません。
異物の種類、大きさ、現在の位置などを考慮し、経過観察が可能なのか、追加の検査が必要なのか、内視鏡や外科手術による摘出が必要なのかを判断します。
当院では内視鏡による摘出設備は備えておりませんが、内視鏡や高度な外科手術が必要と判断した場合は、対応可能な二次診療施設や夜間・提携病院をご紹介いたします。
▶︎ まとめ
犬や猫の異物誤飲では、**「何を飲み込んだか」と「どのくらい時間が経っているか」**が、その後の対応を考えるうえで大切な情報になります。
催吐処置は、胃の中にある異物を比較的負担の少ない方法で取り出せる可能性がある一方、すべての誤飲に行えるわけではなく、処置をしても異物が完全に排出されるとは限りません。
異物を飲み込んだことに気づいたら、ご家庭で無理に吐かせたり、元気だからと長時間様子を見たりせず、まず動物病院へご連絡ください。
また、夜間や休診日に明らかな異物誤飲が起きた場合には、翌日の診療時間まで待つのではなく、必要に応じて夜間救急動物病院への相談・受診もご検討ください。
早めに対応することで、催吐処置を含め、より負担の少ない方法を選択できる可能性があります。





